ブラックムービー紹介:その壱:『マンディンゴ』

『ハーレム』と聞いたら何を想像する?

女性に囲まれてとろける顔をしている男性?(このハーレムの英語のつづりはHarem) それともヒップホップファッションに身をつつんだ若者たちの街?(このハーレムの英語のつづりはHarlem)

黒人の都、ニューヨークのハーレムは人情あふれる面白い街。

今回は、ブラックムービーレビュー第壱弾『マンディンゴ』についてです。
(ライター:ナカムラアキツ)



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そういえばすっかり忘れいていたのですが、アメリカでは毎年2月はBlack History Month~『黒人歴史月間』。

『ミリオンダラーズ・ベイビー』でオスカー助演男優賞を取ったモーガン・フリーマンが「黒人歴史月間なんてやらなくたっていいじゃないか」と言って、黒人たちの間で物議をかもしたこともありましたが。



彼が言いたかったのは、2月だけありとあらゆるメディアが黒人の歴史をフューチャーするけれど、本来であれば、他の月だって黒人の歴史はフューチャーされるべき。ということなんですな。だって「白人歴史月間」なんてないんですからね。

黒人の歴史はアメリカの歴史。ということらしいです。

とはいえ、ついに初の黒人大統領が誕生したアメリカ。
今年はなんとなく雰囲気がいつもと違うと感じるのは気のせいだろうか。

ということで、ブラックムービーのご紹介シリーズ(?)を始めます。

今回紹介する映画は『マンディンゴ』。





ところで突然ですが、映画『風とともに去りぬ』って、好きですか?
うちは母親(70歳)が大好きで、ビビアン・リー演じるスカーレット・オハラに骨抜きされ状態。

あたしも「明日には明日の風が吹く」という台詞を何度聞かされたことか。

この映画は、その時代よりもちょっと前の話(『風とともに去りぬ』は1960年代)。
そして『風ととにも去りぬ』が表なら、この話は裏。
白人としては(もしくはアメリカとして?)世間に知られたくない奴隷と、その奴隷を扱っている白人家族模様についてのお話。

時は1820年代、場所はディープ・サウス、ハリケーンカトリーナ被害でさらに有名になったニューオリンズ。
湿地帯というのも大きく手伝って、この地域にはたくさんの『綿の土地:コットン・フィールド』があった。もちろん働いているのは奴隷である黒人で、その黒人たちを扱っているのは白人。

主人公はいわゆる地主である白人家庭の長男。
でも、そんな彼はある意味当時としては「もうちょっと見解が広い」人として描かれている。

もちろん「白人」だから「正妻」は白人がよろしいのだけれども、奴隷である黒人の若い娘たちの「処女」はみーんなもらえちゃう特権を持っている。お妾さんというのか、ぜんぜん違うけれど側室みたいな感じとでもいいましょうか。

ある日、主人公の彼は、いとこのお家であてがわれた黒人の女性に恋に堕ちた。
もちろん彼は彼女とは結婚できないけれど、自分のお家へ向かい入れ、奴隷以上のもてなしをする。

その後日、彼が奴隷市場に行ったときに『マンディンゴ』を手に入れた。
当時は黒人同士で拳闘するのを白人がお金を賭けて見るのがはやっていて(多分、格闘技の大元はここからやってきているのだろう)、そこで勝ち上がった人だ。
そう、ケンカの強い(そして白人の欲求を満たしてくれる)黒人のことを当時は『マンディンゴ』と呼んだようだ。

白人の彼は黒人の彼女と「マンディンゴ」をとても大切にしていた。
彼はとくにマンディンゴがお気に入りで、自分のボディーガードとしていろんなところへと連れて行っていた。

そして主人公の彼は、いとこの妹(白人)を、嫁へと向かい入れた。
ところがこの娘が「ヴァージン」ではなかったことから悲劇が始まる。



面白いもので、それがアメリカだけでなく世界的見解だったのだろうか、当時の殿方たちの見解としては、「やっぱり妻にするなら処女がよろしい」という、オンナのあたしからしてみればある意味侮辱とも思える考えがあったみたいですね。



「うちの家族や友だちはこの映画、見れないよ」と、旦那はいう。
「あまりにもリアルでハードだから」とのことらしい。

そういえば、10年以上も前に現代美術家韓国人と一緒に仕事していて、作品の関係上、日本と韓国の歴史を触れることになって、韓国が製作した韓国の天皇制を時の日本軍が破壊したというドキュメンタリーを元にしたドラマを見せられた。

「アキツ、どう思う? 日本人としてどうだよ」
と、普段は日本人だとか韓国人だとか関係なく仕事をしていたのに、彼女から問われたとき、あたしは何も返す言葉がなかった。

習ってこなかったこととはいえ、あまりにもハードな(そしてヘヴィな)内容だったからだ。

それと同じように(もしくは同列にしてはいけないのだろうけれど)、アメリカに連れてこられたアフリカ人が奴隷にされたのは周知の事実。そして彼らが受けてきた屈辱的行為も。



「お前は黒人じゃないから、俺たちのことなんてわかりゃしない」
「俺たちは奴隷だったんだからな!」

と、ハーレムに住んでいて、あたしは今までに旦那だけでなく何人かの黒人から言われたことがある。

あー、またか、うっとおしいなあ。いつまでもそんなこと言ってないでよ。今は21世紀だよ、奴隷だったのはアンタじゃないでしょ? 
と言いたくなることが多いけれど、この映画を観ると「うーむ」となってしまう。

彼らが未だにそう言うのは仕方がないことなのかな、と。

いつだって加害者はすぐに忘れ、被害者はいつまでも覚えている。
そして、その傷が癒えるには、400年という奴隷の歴史があったように、同じ400年かかるのかもしれない。

でも、この映画に出て来てる人たちは「奴隷だけれども、人間としての誇りは忘れないように」といったような孤高感が感じ取れるのは、所詮は映画、作られた物語の中だから?

とはいえ、オバマが大統領になったので、ある程度は癒されたとは思う。

日本で今回の大統領選挙から就任式までどういった形で放送されていたのかはわからない。ネットでいくつか読んだけれど、違和感があった。

いくら黒人の歴史を勉強していても、実際に住んで、彼らと関わっていないと、どうして彼ら黒人が涙を流しながらオバマの演説にききっていたのかわからないと思う。

アメリカ黒人は、つねに「怒り」を持って生きてきた。
それは奴隷として扱われ、自分たちの感情を押し殺さざるを得ない。常に周りから抑圧され、奴隷から解放されても、それは続く。
社会の中だけでなく、黒人同士の間でも。



ディープな内容で、見終わった後はどこかへ放り投げだされた感じで落ち着かないけれど、とてもいい映画。

奴隷になってしまった黒人だって立場によって苦悩、当たり前だけど人格があって、そして支配者である白人にも人格がある。別に「黒人だから」「白人だから」という枠組みに当てはめられないドラマがあるけれど、でも、やはりそういった時代背景がこの映画をよりいいものにしているのだろう。

歴史って、やっぱり偉大、なんだよね。

日本語訳が出ているかは不明だけど(多分、マイナーなのでないだろうけれど)、黒人の歴史などに興味があるなら(いや、なくとも)ぜひ観て欲しい作品です。
アメリカのAmazonで購入できまする。

ちなみにメインの音楽はシカゴ・ブルースの巨匠、マディ・ウォーターズ。
ブルースなんてしみったれていていやだなあ、よい曲もたくさんあるけれど、すぐ飽きてしまうんだよね~なんて思っていた。
けれど、この作品には驚くほどマッチングしていて、いや、ブルースってすごいんだ、と改めて思わせてもらったくらい。歌詞が映画にマッチしていて、泣かせるんですよね。

マディ・ウォーターズは日本でも簡単に購入できるので、よかったらどうぞ。
ウィスキーをオン・ザ・ロックにして、ルームランプ一つだけつけて、思いをはせて下さい。

↓こちらのヴィデオは、マディ・ウォーターズとローリング・ストーンズのライブ。ストーンズのバンド名は、マディ・ウォーターズの曲名(ROLLIN’ STONE)からきていることは有名。






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『ハーレム通信』

◇イラストを使ったTシャツも作っています(ベイビー、キッズ、ガールズそしてメンズ)。
『Store Dragonfly』

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『10027yc』
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